先日の休みに、昔は『チンチン電車』と呼んでましたが、路面電車の都営荒川線に乗って、雑司が谷の『鬼子母神』に行って参りました。
境内には駄菓子屋が有って、子供の頃は『あんず飴』『ラムネ』『きな粉餅』など食べるのが楽しみでしたが、今でもまだ残っていたのでビックリしました。
ここに祭ってある鬼子母神(きしもじん)のご尊像は室町時代の永禄4年(西暦1561年)1月16日、雑司の役にあった柳下若挟守の家臣、山村丹右衛門が清 土(文京区目白台)の地の辺りより掘りだし、星の井(清土鬼子母神〈別称、お穴鬼子母神〉境内にある三角井戸)あたりでお像を清め、東陽坊(後、大行院と 改称、その後法明寺に合併)という寺に納めたものと言う事です。
現在で聞く話では、鬼子母神は安産・子育(こやす)の神様として広く信仰の対象となっていますが、もともとの来歴には深いいわれがあります。
王舎城(オウシャジョウ)の夜叉神の娘である鬼子母神は、その昔、インドで訶梨帝母(カリテイモ)と呼ばれており、嫁いだ後に子宝に恵まれ、多くの子供を産み育てました。しかし、他人に対する訶梨帝母の性質は非常に残虐なものであり、近隣に住む子供を捕まえ、その肝を食べてしまうので、人々からは恐れられ憎まれておりました。そこでお釈迦様は、その過ちから救うことを考え、訶梨帝母の一番末の子供を隠してしまいました。自らお腹を痛めて産んだ自分の子供が居なくなってしまった事を知った訶梨帝母は、狂ったように嘆き悲しみ、その痛ましい様子は限りないものでした。それを御覧になられていたお釈迦様は、「千人のうちの一子を失うもかくの如し。いわんや人の一子を食らうとき、その父母の嘆きやいかん」と訶梨帝母を戒めました。その御教えによって、訶梨帝母はこれまで自分がしてきた過ちを悟り、改心してお釈迦様に帰依する事となりました。それ以降、後安産・子育の神となることを誓い、多くの人々に尊崇されるようになったとされています。
私はこの話を初めて聞いた時、鬼子母神に対して『なんて身勝手で残酷な人だろう』と思いましたが、同時に『人間らしさ』と言うか、何か憎めないキャラクターを感じました。
現代人である私たちの生活様式は多様化しております。そのためでしょうか、『昔は人情味があった、今の人たちゃドライでいけねえ。他人様などおかまい無しだ。』と人生の緒先輩方が憂いていらっしゃるのを御聞きする事が多々あります。もちろん私も含まれますが、人間は元来身勝手で、人はその人の立場になってみないと、本当に相手の気持ちを理解する事は出来ません。
『鬼子母神』は極端ではありますが、実に自分に正直な、ある意味ピュアな本来の人間クサイ心を持っている人(神)であると思いました。
医療の世界にあてはめて見ますと、たとえば胃炎、膵臓炎、十二指腸潰瘍など腹痛で来院した患者さまの局所の状態は、超音波、CT、内視鏡など医療技術の進歩により詳細な情報まで得られる事が可能になりました。しかし、その患者さまが『自分はもしかしたら死んでしまうかもしれない』など、とても不安に思っていらっしゃる場合、その精神状態や深層心理を把握する事は、いかなる医療機器を使用しても出来ません。
『医は仁術』と申しますが、治療に対し身体面にだけ囚われて、悩んでいらっしゃる患者さまの精神面の把握を疎かにした場合、その医療従事者は多かれ少なかれ『鬼子母神』の心になっているのではないでしょうか。
特に美容外科の手術では、ほとんどの場合外見上の御悩みを改善して行く事がメインとなりますので、御本人の気持ちは他人さまにはなかなか御理解して頂けない事が多いのが実情です。患者さまだけではなく、美容外科クリニックの診療に従事している、われわれ医療スタッフも その点には非常に残念に感じる事があります。
『まぶたが二重でなくてもいいじゃないか。』、『シワやタルミがあっても構わん。』『そんなところを治さなくても生きていけるし、医療的にもっと必要性のある診療科があるだろう。』という御意見を御聞きすると確かにもっともであると思います。
しかし当人にとっての悩みは、他の誰にも理解できない程深いものかも知れません。そのために、心身症や心気症(精神面のストレスから身体面に影響が出現してしまう事)に移行するケースもあり、この状態を改善する事に必要性を感じざるを得ません。
また美容外科は外見重視と思われている事が多いですが、機能的な改善を目的とする手術も多いのです。
一番ポピュラーである『二重まぶた』の手術も、一重ま ぶたの状態が強いと、『睫毛内反症(逆さまつ毛)』となり結膜炎や角膜炎を引き起こす事があり、場合によっては視力低下に影響してくる事もあります。
この場合は、二重まぶたにする事により、逆さまつ毛は改善されます。そればかりでなく、まつ毛はビューラーやまつ毛パーマをかけたように、上方を向き目元が大きく明るい印象を受けます。単に外見的な意味だけで無く、機能的な改善も行なえるのです。
身勝手な『鬼子母神』の話しから、各人にとっての悩みはそれぞれですが、その身になって初めてその重要性がわかること、さらに美容外科クリニックでの患者さまや働くスタッフの事など、お話として少々飛び過ぎてしまいました。
しかし現在では、大学病院や総合病院に美容外科が併設されているところはたくさんあります。
また美容外科個人クリニックでも、医療としての必要性を感じて 真剣に取り組んでいらっしゃる御立派な先生方も大勢いらっしゃいます。
以前の『鬼子母神』ではありませんが、美容外科は決して危険で不必要な診療科ではあ りません。
お悩みをお持ちの患者さまは、御遠慮無く安心して御来院されてみてはいかがでしょうか。
お子様連れでも、御心配はいりませんよ。(^〇^)